話題になっている『M 愛すべき人がいて』を読んでみました。
賛否両論がある、この小説。
どちらの意見もわかるなというのが読んだ後の素直な感想です。
携帯小説のように読みやすく(本を普段読まない若い人が読みやすいようにあえてしているのかな?とも思いますが)、作りこまれたフレーズが逆にチープな印象を与える一方で、
間違いなく一時代を築き上げた「浜崎あゆみ」という歌手が、普通の女の子から「浜崎あゆみ」になるまでのストーリーは面白く、一気に一晩で読んでしまいました。
私は、烈々なファンだったわけでもなく、
でも、高校時代カラオケではいつも彼女の歌を歌っていた、まさにどんぴしゃの世代です。
中には、歌に「M」の存在が重なるから楽しめなくなるという意見もありますが、
こういうことがあって、あの歌詞が生まれたのかという答え合わせができ、楽しかったです。
サイバーエージェントの藤田社長が号泣したと言っていました。
きっかけは、パーソナルな些細なことで、目の前のことを一生懸命にやっていくうちに、
いつの間にか、自分の手にも追えない大きなものになり、
今度は、そこから逃げ出したくても、逃げ出せなくなってしまった孤独や苦悩、
でも、前に進むしかないという状況に、
自分を投影するようなところがあったのではないかなと思いました。
本が出版されたと聞いたときには、私も、なぜこのタイミングでこの話をするのだろう?と思っていましたが、読んでみると、なぜ彼女が引退しないのかという理由が、とてもよくわかりました。
人は、”anchor” 錨のように拠り所が必要な生き物だと思います。
家族がいる人は、家族が拠り所になるし、仕事が拠り所になることもあります。
彼女にとって、築き上げた拠り所となるものが、重くても、「浜崎あゆみ」なのでしょう。
だから、やめることができないのだと、これからも続けていくのだと思いました。
彼女が時代の寵児となったことは疑いようもなく、そんな彼女でもデビュー前は売れないと言われ続けたこと、それを情熱を持って、押し切って「売ろう」としてくれた人がいたこと。
公私混同とか、売り物に手をつけるなんてという考え方もあるのだろうけど、
そんなドライな感覚では、スターダムは築けなかったのではないかな。
損得勘定を抜きにした、パーソナルな感情があるからこそできたことで、
情熱なしに、世界を動かす仕事なんてできないと教えられたような気がしました。
読んだ後は、気づくと彼女の歌を口ずさんでしまっている自分がいます(笑)