“同じ”の違いに翻弄される

例えば、黒いバックがあって、縁取りが赤だったとする。

写真を送って、同じものをと言ったら、日本では、間違いなく、同じものが出てくると思う。

黒くて、縁取りも赤いものが。

縁取りの色とか、裏地の色とか、もしくは、ポケットのデザインが違ったら、似たようなバックにはなっても、「同じ」とは言わない。

でも、ガーナでは、このぐらいの違いは、99%の人が「同じバック」とみなす。

同じだと思っているから、その違いが生まれてしまうことを事前に確認することもない。

このスタンダードの違いは、異文化間ではどこでもある程度あるものの、日本とガーナでは、この基準の乖離が激しい。

となると、非常に簡単ななんてことないことが、とても難しくなるのが、ガーナだ。

この点が気にかかっていたので、新たに同じ石鹸を注文する前に、確認をしておきたかった、というのも、今回の旅の課題の一つだった。

私の勘は正しかった・・・

大変なサプライズをもらうところだった。

念のため、今の石鹸をサンプルとして渡して、これと同じものをと言っても、(当の本人が作ったにもかかわらず)全く別物が上がってくるところだった。

まず、包みの上から見ても色が違う。香りも違う。

未精製素材を使ったナチュラルな手作りソープなので、全く均一には仕上がらないことは重々承知だ。

でも、この違いは、その天然素材のブレの範囲ではない・・・と思う。

「改良したの?」と聞いても、当人は、

「全く同じよ。作りたてだとちょっと色が濃いけど、だんだん落ち着いてくるのよ」

と、言い張る。

「わかったわ、色は別として、香りが全然違うと思うの。エッセンシャルオイルのブレンドが変わった?これはこれで良いけれど、前のものは、上品で、他で嗅いだことのないものだったわ。日本のお客さんもとっても気に入っていたのよ」

「あ〜、あれね。私もね、ああいう強すぎないものが好きなのよ。禅の影響かしらね、アジア人には好評だけど、ガーナでは、こっちのほうが人気なのよ」

と、

結局、違うんじゃないか

ということが露呈する。

「アメリカのトレードフェアで見つけたのよ。もう売ってないの。だいたい、ものによって価格を変えるのが嫌だから、ソープはソープで一律で値段をつけているけど、あのエッセンシャルオイルはとっても高いのよ。他のものより、このソープは原価が高いの。みんな知らないけど」

と言って、全然異なる、リテール価格並の値段を提示してくる。

「レントも払わなきゃいけないし、電気代はあがるし、もうこの値段じゃとても出せない。包めないわ」

エッセンシャルオイルの中には、とても高価なものがある、のは事実だ。

だが、もし、彼女が言う通りの値段で、それだけの量を使っているならば、そもそもそれを使うだけで、原価割れしている(笑)

「あなたが自分で調達するなら使えるけど・・・」

「じゃあ、私が自分で調達するなら、その分、価格を安くしてくれるわよね?」

「もちろん」

と、言いながら、

そりゃないだろうっていうような、また、ほぼ変わらない価格を提示する彼女。

「困ったわ。それじゃ、もう日本で出せないわ・・・。私は、100個近い石鹸をガーナで試したけど、あなたのレシピがダントツで一番だと思うのよ。日本のお客さんも、とても喜んでいるし・・・同じものを使いたいって人に、もう同じものを届けられないわねえ・・・」

と、持ち上げると、

「アメリカにいるいとこが、もしかしたら、リーズナブルな値段で入手できるかもしれないわ」

と、変わる。

結局、入手できるの??

会うと良い人なのだけれど、なんと表現したら良いのか、彼女の気まぐれなのか、独特な態度には、以前も、「もうこれでダメなら諦めよう」というところまでいっていた。

面倒なのか、正式に輸出するために必要な書類の準備に全く協力してくれたなかったのだ。

以前、米国や欧州働くガーナ人金融マンに、別件で会った時にも、たまたま彼女の話が上がって、

「資金調達したいって相談に来てね。良いものを作るんだけど、やり方が実にガーナ的でねえ・・・輸出だってしているし、もっといくらでも伸びるはずなんだけど。新たに取引先を紹介したのに、サンプルを海外に送ることも、なんだか知らないけど、できないって、結局送れなかったんだよねえ」

まるでビジネスをしたくないかのような、こういうよくわからない現象は、あちこちで見られる。

とりあえず、同じだと言い張る、その石鹸を購入して、試してみることにした。

ガーナ人パートナーですら、

「見ただけで違うのは気づいたけど、比べて使うと更に違って、100%の確信が持てた。違うということに」

と言う。

「まあ、今度は俺が話してみるよ」

なぜか、彼は、彼女に好かれている。

彼が出てくると、彼女の顔がパッと華やぐし、おまけ(ほとんどのガーナの会社は、サンプルを無料で渡すという習慣がない)もくれる。

こういうときは、ガーナ人のガーナ人によるガーナ流のコミュニケーション能力が必要だ。

私を、「細くてうるさい」と悪者にしてもらってもいい。

違いを理解してもらい、同じものを同じぐらいの値段で落とし込んで、話をまとめられるか、どうか。

気を病んでも仕方がないので、うまくまとめてくれることを祈ろう。

そうでないと、Moringa & Shea Butterソープは、ラインナップから姿を消してしまうかもしれません・・・

赤ちゃんや敏感肌の方に人気の、ファンが多い石鹸なのに(泣)

 

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